人生に大切なことはすべて絵本から教わった2011-2012
第2回 「いのち」をめぐって - 宮沢賢治を手がかりに 末盛千枝子、 中村桂子
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出演 | 末盛 千枝子、中村桂子(生命誌研究者) |
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日時 | 2011年7月30日(土) 14:00-15:30 |
会場 | ヒルサイドプラザ |
定員 | 150名 |
会費 | 一般2,500円 クラブヒルサイド会員1,500円 |
予約・問合せ | ヒルサイドインフォメーション TEL: 03-5489-3705 FAX: 03-5489-1269 E-MAIL : mail info@hillsideterrace.com |
出演者
末盛千枝子
1941年生まれ。絵本の編集者を経て、88年すえもりブックスを設立。 以後、タシャ・チューダー、ゴフスタインの絵本、皇后美智子様の講演録など、独自の価値観による出版を続けている。 2010年4月に『人生に大切なことはすべて絵本から教わった』(現代企画室刊)を出版。同年5月に岩手県八幡平市に移住。編集・講演・執筆活動を行う。
中村桂子
1936年東京都生まれ。東京大学理学部化学科卒業、同大学院生物化学博士課程修了。JT生命誌研究館長。 国立予防衛生研究所、三菱化成(現三菱化学)生命科学研究所、早稲田大学人間科学部教授などを経て、1993年に自ら提唱する「生命誌」の理念を実現する「JT生命誌研究館」を設立。 生命の普遍性と多様性を綜合的に捉え、関係と時間の中で解明しようとしている。1996年には大阪大学連携大学院教授に就任、2002年にはJT生命誌研究館館長に就任し現在に至る。 著書に、『あなたのなかのDNA』『科学技術時代の子供たち』『生きものの感覚で生きる』『自己創出する生命』『「子ども力」を信じて、伸ばす』など。1992年より毎日新聞「今週の本棚」にて書評を担当。
イベント概要
関連シリーズ
人生に大切なことはすべて絵本から教わった
2011-2012
編集者として45年にわたり美しい絵本と関わってこられた末盛千枝子さん。2008年度ヒルサイドテラスで大好評を博し、同名の書籍も生み出したセミナーシリーズが、多くのご要望を受けて再開されます。多彩なゲストもお迎えしながら開催します。人間の生き方のなかに本当の美しさを見据え、それを出版を通して人々に伝えてこられた末盛さんの滋味豊かな言葉に触れてください。
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- 第2回 「いのち」をめぐって - 宮沢賢治を手がかりに 末盛千枝子、 中村桂子2011年7月30日(土) 14:00-15:30終了しました
- 第3回 いま、読みたい絵本2011年10月22日(土)終了しました
- 第4回 大編集者マーガレット・マッケルダリー2011年11月26日(土)終了しました
- 第5回 M.B.ゴフスタイン「あなたのひとり旅」―出版をめぐって 末盛千枝子、谷川俊太郎2012年2月4日(土)終了しました
- 1冊の絵本をあなたに―「3.11 絵本プロジェクトいわて」から3月24日を予定しておりましたが、諸事情により延期いたします。 日程が決まり次第お知らせいたします。終了しました
- 第6回 母を語る2012年4月14日(土)終了しました
- 第7回 子どもという不思議 (最終回)2012年6月9日(土)終了しました
人生に大切なことはすべて絵本から教わった レポート 第2回「『いのち』をめぐって ― 宮沢賢治を手がかりに」



2011年7月30日(土) ヒルサイドプラザ
生命誌を提唱されている科学者・中村桂子さんをゲストに迎え、〈「いのち」をめぐって―宮沢賢治を手がかりに〉と題したセミナーが、7月30日、ヒルサイドプラザで行われました。
昨年5月、末盛さんが岩手に移住された後の今年3月11日の東日本大震災。震災前の企画が今まさに時宣を得、「いのち」について、さらには、これからどう生きていくのか、どのような社会をつくっていくのかという問題について、多くの示唆的なことばが交わされる会となりました。
NHK番組「こだわり人物伝」の中で、中村桂子さんが宮沢賢治の「いちょうの実」について話されているのを観、今回の対談を希望されたという末盛さん。宮沢賢治に関しては熱心な読者ではないという告白から幕を開けたセミナーでしたが、宮沢賢治を生んだ東北という場所に住み、毎日の生活を送られる中で、隣人としてのきつねやきつつきに出会い、「セロ弾きのゴーシュ」の物語を彷彿とさせるような場面に出くわされているという数々のエピソード、また、自然と関わりを持って生きている農家の人の言葉や姿勢に、たくさんの賢治(哲学者)を見、感じているというお話などをしてくださいました。
3月11日という日を経験し、効率ということばかりが目指される今の現代社会ではない「いのち」をベースにした社会の重要性を、今、改めて感じていらっしゃるという中村桂子さんは、時に作品の本文を読み、紹介しながら、自然とやりとりする際の宮沢賢治の特別な感性について語ってくださいました。
『風の又三郎』然り『注文の多い料理店』然り、どこからか風が吹いてきて物語が始まる。そこには原子力が危険だから、その代わりのエネルギーとして、風、風力を利用するのではない、風そのものを感じた上でのほんとうの風が描かれていると中村さんはおっしゃいます。
「このお話ではまったく誰がかしこくて誰がかしこくないかわかりません」といった象徴的なことば、そして、知恵が足りない主人公・虎十をそのままに受け入れる家族の姿も中村さんが好きなところのひとつだという『虎十公園林』。末盛さんからは、障害をもった子どもと生きる豊かさが語られました。西洋化した価値観と、土着的な価値観との相克を描いたとも読み取れる『土神ときつね』。そのどちらもが賢治であったのではないか、と中村さんは語ります。『フランドン農学校の豚』では、現代の医療現場で行われているインフォームド・コンセントの概念を先取りし、かつ、それを鋭く批判するような賢治の視点があることなどを指摘。賢治作品の魅力とその不思議、凄みについてことばを重ねてくださいました。
グローバル化という言葉のみが先行する昨今、ローカルということをつき詰め、それだからこそ、世界中の人びとに愛され続けている宮沢賢治。中村さんは、芭蕉や万葉集のうたなどにも触れながら、自然との関わりが深い日本文化の特性について触れるとともに、その特性を宮沢賢治作品が多く持っているということ、それは古くから東北に根をはり、今も私たちの文化を支えてくれていると、美しい言葉で語ってくれました。多くの示唆とメッセージをいただいた1時間半でした。