人生に大切なことはすべて絵本から教わった2011-2012
第6回 母を語る
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出演 | 末盛 千枝子(編集者) |
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日時 | 2012年4月14日(土) 14:00-15:30 |
会場 | ヒルサイドバンケット |
定員 | 70名 |
会費 | 一般2,500円 クラブヒルサイド会員1,500円 (紅茶・お菓子付き) |
予約・問合せ | ヒルサイドインフォメーション TEL: 03-5489-3705 FAX: 03-5489-1269 E-MAIL : mail info@hillsideterrace.com |
出演者
末盛千枝子
1941年、彫刻家・舟越保武の長女として東京に生まれる。絵本の編集者を経て、88年すえもりブックスを設立。以後、タシャ・チューダー、ゴフスタインの絵本、皇后美智子さまの講演録などを出版。2010年4月に『人生に大切なことはすべて絵本から教わった』(現代企画室刊)を刊行後、同年5月に岩手県八幡平市に移住。2011年3月「3.11絵本プロジェクトいわて」を立ち上げる。2012年2月、現代企画室の新シリーズとして、「末盛千枝子ブックス」がスタートする。
イベント概要
岩手に移ってから、末盛さんは、盛岡の「深沢紅子野の花美術館」に保武と出会った頃の、若い母の美しい肖像画があることを知り、あらためて、芸術を愛し、すべてに前向きだった母の人生を考えたと言います。そんなお母様について、末盛さんにお話しいただきます。
関連シリーズ
人生に大切なことはすべて絵本から教わった
2011-2012
編集者として45年にわたり美しい絵本と関わってこられた末盛千枝子さん。2008年度ヒルサイドテラスで大好評を博し、同名の書籍も生み出したセミナーシリーズが、多くのご要望を受けて再開されます。多彩なゲストもお迎えしながら開催します。人間の生き方のなかに本当の美しさを見据え、それを出版を通して人々に伝えてこられた末盛さんの滋味豊かな言葉に触れてください。
- 第1回 良寛とフランチェスコ ― 大正デモクラシーがもたらしたもの 末盛千枝子、 北川フラム2011年6月11日(土)終了しました
- 第2回 「いのち」をめぐって - 宮沢賢治を手がかりに 末盛千枝子、 中村桂子2011年7月30日(土) 14:00-15:30終了しました
- 第3回 いま、読みたい絵本2011年10月22日(土)終了しました
- 第4回 大編集者マーガレット・マッケルダリー2011年11月26日(土)終了しました
- 第5回 M.B.ゴフスタイン「あなたのひとり旅」―出版をめぐって 末盛千枝子、谷川俊太郎2012年2月4日(土)終了しました
- 1冊の絵本をあなたに―「3.11 絵本プロジェクトいわて」から3月24日を予定しておりましたが、諸事情により延期いたします。 日程が決まり次第お知らせいたします。終了しました
- 第6回 母を語る2012年4月14日(土)終了しました
- 第7回 子どもという不思議 (最終回)2012年6月9日(土)終了しました
人生に大切なことはすべて絵本から教わった レポート 第6回 「母を語る」
2012年4月14日(土) ヒルサイドバンケット
彫刻家舟越保武さんの妻、そして末盛さんたち7人兄弟の母である舟越道子さんは、俳人、詩人としても知られています。今回は、その舟越道子さんを巡って、娘の目に映った母の姿を、印象深いエピソードとともにお話しいただきました。
道子さんは釧路の商家出身で、兄弟にひとりずつお手伝いさんがいるような家で育ったそうです。一方、「武士は食わねど高楊枝」という言葉を連想するような厳格な家庭で育ったという保武さん。道子さんに一目惚れした保武さんが、ご友人の彫刻家・佐藤忠良さんに、銭湯の湯船のなかでその思いを打ち明けたことや、保武さんから道子さんに送られたお手紙のことなど、心温まるお話を聞かせてくださいました。
決して裕福ではない暮らしのなかで、激しい夫婦喧嘩も多かったというおふたり。道子さんは「わたしたちが喧嘩するときは、いつもお金がないときだった」と語っていたそうです。ご両親の苦しみや切なさも感じていた末盛さん。重なるものを感じると、映画「自転車泥棒」から胸に響くワンシーンを紹介されました。「自転車でやっと仕事を見つけたお父さんが、自転車を盗まれて、今度は誰かの自転車を盗んでしまう。それを小さな子どもが見ていて、ふたり黙って川岸に座る場面が忘れられません。すごく好きな映画ですけど、二度と見る気がしないと思う程、胸が痛い映画」だと話されました。
7人兄弟の末盛さんには、8ヵ月で亡くなられた弟さんがいます。疎開先だった盛岡から東京へ戻るときに道子さんが書かれた美しい詩を朗読されました。「母にとっては、死んだ子どものお墓を残して盛岡を去っていくのは、堪え難く哀しいことだったと思います」。
そのほか、イタリアにて、英語も話せない道子さんが、ひとりで遠くの知人の家まで行ってしまい度肝を抜かれたという話や、フランスにて、ゴッホの終焉の地をふたりで訪ねた日のこと、大学へ入る末盛さんに伝えられた男女交際についての教えなど、お茶目な面もあり、遊び心も旺盛な道子さんのお話に、会場はたびたび笑いに包まれました。
最後に、ヘミングウェイの文章を紹介して、今回のお話を締めくくられました。「『勇気とは、困難にあって人が見せる気品のことである』。これは、母から教わったことだったと思っています」。大変なことや大きな哀しみを抱えても、ユーモアの心を忘れない末盛さんの気質は、お母さまから受け継がれたのだと感じさせる、素敵な逸話の数々でした。