新津保建秀写真スクール「見えないものを撮る」 第4回〈「時間」を撮る〉 ゲスト:池上高志
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毎回、異なるテーマのもとに受講者が撮ってきた写真をめぐり、多様な分野の第一人者をゲストに迎え、 ディスカッション形式で講座を展開します。夏には「大地の芸術祭」の里、越後妻有で合宿形式のワークショップも行い、 講座終了時には、全講座の成果を発表する展覧会を代官山のヒルサイドテラス内、ヒルサイドフォーラムにおいて開催します。
展覧会では、写真・美術・カルチャー・広告等の雑誌編集長によるレビューを実施し、年齢を問わない、新しい才能の発掘の場となることを目指します。
第4回は、複雑系科学者の池上高志さんをお迎えし、越後妻有「大地の芸術祭の里」にて、一泊二日の合宿形式のワークショップを行います。
日時 | 2011年8月27日(土)~8月28日(日) |
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会場 | 新潟県越後妻有「大地の芸術祭の里」での1泊2日の合宿形式 |
定員 | 25名 |
受講料 | 一般6万円 クラブヒルサイド会員5万円 学生5万円 ※第4回 1泊2日の宿泊費【朝夕食付】 終了レビュー参加費含む |
主催 | クラブヒルサイド |
協力 | 代官山スタジオ |
登壇者・講演者
新津保建秀
1968年生まれ。写真と映像による作品制作を行う。数多くの企業広告、音楽、映画、文藝、ファッション、建築の写真を手がけ、 異分野のクリエーターとの共同作業も多い。昨年手がけたものとして、日本郵便年賀状キャンペーンポスター、 「きこえる?School & Music」(文藝春秋/東京大学知の構造化センター pingpong project)など。 写真集に『記憶』(FOIL)、『夏*』(マドラ出版)、『Rugged TimeScape』(FOIL)。関連書籍に『建築と写真の現在』(TNプローブ)がある。
池上高志
1961生まれ。東京大学大学院情報学環/広域システム系教授。専門は複雑系の科学/人工生命。非生命的なものの現象をもとに生命現象について考える。人工生命分野を国際的にリードする第一人者。アートやデザインにも活動の場を広げる。著作に『動きが生命をつくる』(青土社 2007年)等。
関連シリーズ
新津保建秀写真スクール「見えないものを撮る」
ケハイ、音、時間、匂い、言葉…。視覚のメディアである写真は「目に見えないもの」をいかに写し撮ることができるのでしょうか。 異分野のクリエーターとのコラボレーションを始め、今もっともその活動が注目される写真家のひとり、新津保建秀が初めて取り組む写真講座シリーズが2011年5月スタートします。
毎回、異なるテーマのもとに受講者が撮ってきた写真をめぐり、多様な分野の第一人者をゲストに迎え、 ディスカッション形式で講座を展開します。夏には「大地の芸術祭」の里、越後妻有で合宿形式のワークショップも行い、 講座終了時には、全講座の成果を発表する展覧会を代官山のヒルサイドテラス内、ヒルサイドフォーラムにおいて開催します。
展覧会では、写真・美術・カルチャー・広告等の雑誌編集長によるレビューを実施し、年齢を問わない、新しい才能の発掘の場となることを目指します。
新津保建秀写真スクール「見えないものを撮る」 第4回 レポート







2011年8月27日(土)~28(日) 新潟県越後妻有「大地の芸術祭の里」
第4回は、越後妻有・大地の芸術祭の里にある「かたくりの宿」での1泊2日の合宿授業。スタッフも含め、総勢30人の参加で大いに盛り上がりました。ゲストは、東京大学大学院教授の物理学者、池上高志さん。長身に白いフレームのサングラスとアロハシャツで颯爽と現れた池上さんは、科学者であると同時にアーティストとしても活躍されています。
今回のテーマは、「時間」。あらかじめ自分のフィールドで撮ってきた写真1枚と、合宿で撮影した2枚を組み合わせた「3枚の写真」によって、時間・空間、そして自分の思考のかたちを表現するという課題です。
1日目の午後、受講生は、峻嶮な渓谷に囲まれてひっそりとある秘境・秋山郷の結東集落を歩き、3時間あまりにわたってそれぞれが撮影に取り組みました。夕食後の講評会では、3枚組の写真によってそれぞれが考える「時間」をプレゼンテーション。それを新津保さんと池上さん、そして受講生同士が深夜まで長時間にわたり批評していきました。
東京と妻有に流れる時間と空間の密度を対照させることで、時間の質を表現しようとした人。時間を生と死に裏付けられた「永遠」としてとらえようとした人。あるいは「流れ」としてとらえようとした人。空間を時間の関数とし表現しようとした人。「観念」としての時間を視覚化しようとした人。あるいは皮膚感覚として時間を表現しようとした人。
池上さんは、写真というメディアのもつ無意識性(写ってしまうこと)とそれゆえの具体性(写されたものがあること)の面白さと可能性を指摘。「時間」という抽象的なものへの、哲学や科学とはまったく異なるアプローチを提示するものであると語られました。
一方、新津保さんは、今回の合宿で、各自が、これまでの授業で見えてきたそれぞれの主題や課題を果敢に深化させようとしていた姿を評価しました。自分の「手癖」(必勝パターン)をあえて封じる、あるいは借り物の言葉や表面的なテクニックに頼らずに「観る」という行為に対して開かれたあり方。それはまた、ひたすら数多く「撮る」ことから獲得できる感覚なのだと受講生を激励しました。
合宿授業の前後にアートツアーも入れ込みながらのプログラム。かつて小学校だった宿で、美味しい地産地消のお食事をいただき、温泉につかり、文字通り「寝食を共にする」なかで、仲間の気配を感じながら撮影し、語り合い、思考をめぐらした2日間。花火やスイカ割りもなつかしい、夏の林間学校でした。