目利きが語る“私の10冊”
第23回池上高志(複雑系科学/東大教授)
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出演 | 池上高志(複雑系科学/東大教授) |
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会場 | ヒルサイドライブラリー(ヒルサイドテラスアネックスB棟3F) |
日時 | 2013年1月11日(金) 19:00-20:30 |
定員 | 50名(要予約) |
会費 | 一般2,000円 クラブヒルサイド会員/学生1,000円 |
主催・問合せ | クラブヒルサイド事務局 TEL: 03-5489-1267 (11:00-21:00 月曜休) FAX: 03-5489-1269 E-MAIL : info@clubhillside.jp |
出演
池上高志(いけがみ・たかし)
1961年長野県生まれ。1984年東京大学理学部物理学科卒業。1989年同学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 広域システム科学系教授。複雑系科学の研究者として、アートとサイエンスの領域を繋ぐ活動も精力的に行い、音楽家、渋谷慶一郎とのプロジェクト「第三項音楽」や、写真家、新津保建秀とのプロジェクト「MTM」など、その活動は多岐にわたる。著書に『動きが生命をつくる』(青土社)、『生命のサンドウィッチ理論』『人間と機械のあいだ』(ともに講談社)、共著に『複雑系の進化的シナリオ』(朝倉書店)、『ゲーム―駆け引きの世界 (東京大学公開講座)』(東京大学出版会)、共訳書にAndy Clark著『現れる存在』(NTT出版)など。
関連シリーズ
目利きが語る“私の10冊”
2008年4月にヒルサイドライブラリーが創設されて4度目の春。その最大の魅力は、各界の「目利き」100人にお選びいただいたヒルサイドライブラリー・コレクションです。 本セミナーでは、毎回「目利き」にご登場いただき、ご自身が選ばれた10冊について語っていただきます。 本は人を通して伝わり、本を介して新たな人と人との交流が生まれます。
※今後の開催予定は決定次第WEBにてお知らせいたします。
- 第1回 池内紀(ドイツ文学者/エッセイスト)終了しました
- 第2回 佐藤忠男(映画評論家)終了しました
- 第3回 青木保(文化人類学者/文化庁長官)終了しました
- 第4回 加藤典洋(文芸評論家)終了しました
- 第5回 中村桂子(生命誌研究者/JT生命誌研究館館長)終了しました
- 第6回 槇文彦(建築家)終了しました
- 第7回 加藤種男(アサヒビール芸術文化財団事務局長)終了しました
- 第8回 野田正彰(精神病理学者)終了しました
- 第9回 福原義春(資生堂名誉会長)終了しました
- 第10回 山本寛斎(デザイナー/プロデューサー)終了しました
- 第11回 菊地成孔(音楽家/文筆家/音楽講師)スペシャル「本と音楽」(1) 菊地成孔が語る「10の本と10の音楽」終了しました
- 第12回 山下洋輔(ジャズピアニスト/作曲家)スペシャル「本と音楽」(2) 山下洋輔が語り、奏でる「本と音楽」終了しました
- 第13回 竹下景子(女優)終了しました
- 第14回 日比野克彦(アーティスト)終了しました
- 第15回 池内了(宇宙物理学者)終了しました
- 第16回 伊東豊雄(建築家)終了しました
- 第17回 東浩紀(作家/批評家)終了しました
- 第18回 平良敬一(建築ジャーナリスト)終了しました
- 第19回 大宮エリー(映画監督・脚本家・作家・演出家・CMプランナー)終了しました
- 第20回 津島佑子(作家)終了しました
- 第21回 原広司(建築家)終了しました
- 第22回 平田オリザ(劇作家/演出家)終了しました
- 第23回 池上高志(複雑系科学/東大教授)終了しました
- 第24回 朝吹真理子(作家)終了しました
- 第25回 隈研吾(建築家)終了しました
- 第26回 三浦雅士(評論家)終了しました
- 第27回 畠山重篤(牡蠣養殖家/NPO法人森は海の恋人理事長)終了しました
- 第28回 小林エリカ(作家・マンガ家)終了しました
- 第29回 森まゆみ(作家・編集者)終了しました
- 第30回 湯山玲子(著述家、ディレクター)終了しました
- 第31回 大竹昭子(作家)終了しました
- 第32回 高橋悠治(作曲家、ピアニスト)終了しました
イベントレポート



今回のゲスト池上高志さんが選んでくださった10冊は小説や詩集、哲学や物理など多岐に渡るものでした。
大学時代に読んだという三島由紀夫の『豊饒の海』は壮大なSFでありつつ、主観性ということが書かれているとのこと。当時の池上さんの心境をよく表しており、色々なことを考えさせられたと言います。
同じく大学時代にはまっていた宮沢賢治の『春と修羅』。序章の詩は、池上さんの研究の方向を支えてくれたといいます。「科学するマインドの重要さが書いてあり、こういう詩を読むと科学することに希望を持つ。サイエンス魂が溢れている本」と池上さん。
ベイトソンは思想上の師匠であり『精神の行動学』の序章を読むと泣いてしまうそう。読む度に頭が揺らぐ感じがして、この感じがなくなったら終りなんじゃないかと思い、それをチェックするためにも開くとのこと。
同じく時々開いて衰えていないかチェックするというのはウィトゲンシュタイン全集『第8巻 哲学探究』。どこを開いても誰にも考えつかないことが書いてあるといいます。
朝永振一郎『スピンはめぐる』は大学一年生のときに読み「これはすごい!」と感動した本。「普通に生活していてもたどりつけない思想っていうものがあり、それをどうしてもどこかで見るべきだ」と池上さんはいいます。「人間の知性っていうのは無限に賢いわけではないが、なにかの方法を使うとこの伸び代は埋めることができる。それが本やコンピューター」「『スピンはめぐる』が一般に教養として知られていないのが非常に残念」「難しさをわかることも重要。自分がわからないものがどういうものかってわかる事は大事」などと学ぶことへの熱い思いを感じる言葉が多く飛び出しました。
専門的なお話では難しい部分もありましたが、池上さんの情熱的な説明からは“おもしろい”という気持ちが伝わってきました。また他にも最近読み感銘を受けた小説や、大好きな作家のものなどを紹介。1冊1冊エピソードや魅力をお話しくださり、お話を聞くとどの本も手に取りたくなりました。「本」や「学ぶこと」のおもしろさ、大切さを再発見させられたセミナーとなりました。