目利きが語る“私の10冊”
第16回伊東豊雄(建築家)
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3年前、ヒルサイドライブラリーの創設時に選んでいただいたのは、建築や空間をめぐる珠玉の10冊。伊東さんが希求する建築とは何か――。本を通して、語っていただきます。
出演 | 伊東豊雄(建築家) |
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会場 | ヒルサイドフォーラム(ヒルサイドライブラリーより変更になりました) |
日時 | 2011年6月15日(水) 19:00-20:30 |
定員 | 80名(要予約) |
会費 | 一般2,000円 クラブヒルサイド会員/学生1,000円 |
主催・問合せ | クラブヒルサイド事務局 TEL: 03-5489-1267 (11:00-21:00 月曜休) FAX: 03-5489-1269 E-MAIL : info@clubhillside.jp |
出演
伊東豊雄(いとう・とよお)
1941年生まれ。1965年東京大学工学部建築学科卒業。主な作品に「せんだいメディアテーク」、「多摩美術大学図書館(八王子)」、「みんなの森 ぎふメディアコスモス」(岐阜)、「台中国家歌劇院」(台湾)など。日本建築学会賞(作品賞、大賞)、ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、王立英国建築家協会(RIBA)ロイヤルゴールドメダル、プリツカー建築賞など受賞。東日本大震災後、復興活動に精力的に取り組む中で仮設住宅における住民の憩いの場として提案した「みんなの家」は、2016年5月までに15軒完成。2016年の熊本地震に際しては、くまもとアートポリスのコミッショナーとして「みんなの家」のある仮設住宅づくりを進め、各地に計80棟以上が整備された。2011年に私塾「伊東建築塾」を設立。これからのまちや建築のあり方を考える場として様々な活動を行っている。"
関連シリーズ
目利きが語る“私の10冊”
2008年4月にヒルサイドライブラリーが創設されて4度目の春。その最大の魅力は、各界の「目利き」100人にお選びいただいたヒルサイドライブラリー・コレクションです。 本セミナーでは、毎回「目利き」にご登場いただき、ご自身が選ばれた10冊について語っていただきます。 本は人を通して伝わり、本を介して新たな人と人との交流が生まれます。
※今後の開催予定は決定次第WEBにてお知らせいたします。
- 第1回 池内紀(ドイツ文学者/エッセイスト)終了しました
- 第2回 佐藤忠男(映画評論家)終了しました
- 第3回 青木保(文化人類学者/文化庁長官)終了しました
- 第4回 加藤典洋(文芸評論家)終了しました
- 第5回 中村桂子(生命誌研究者/JT生命誌研究館館長)終了しました
- 第6回 槇文彦(建築家)終了しました
- 第7回 加藤種男(アサヒビール芸術文化財団事務局長)終了しました
- 第8回 野田正彰(精神病理学者)終了しました
- 第9回 福原義春(資生堂名誉会長)終了しました
- 第10回 山本寛斎(デザイナー/プロデューサー)終了しました
- 第11回 菊地成孔(音楽家/文筆家/音楽講師)スペシャル「本と音楽」(1) 菊地成孔が語る「10の本と10の音楽」終了しました
- 第12回 山下洋輔(ジャズピアニスト/作曲家)スペシャル「本と音楽」(2) 山下洋輔が語り、奏でる「本と音楽」終了しました
- 第13回 竹下景子(女優)終了しました
- 第14回 日比野克彦(アーティスト)終了しました
- 第15回 池内了(宇宙物理学者)終了しました
- 第16回 伊東豊雄(建築家)終了しました
- 第17回 東浩紀(作家/批評家)終了しました
- 第18回 平良敬一(建築ジャーナリスト)終了しました
- 第19回 大宮エリー(映画監督・脚本家・作家・演出家・CMプランナー)終了しました
- 第20回 津島佑子(作家)終了しました
- 第21回 原広司(建築家)終了しました
- 第22回 平田オリザ(劇作家/演出家)終了しました
- 第23回 池上高志(複雑系科学/東大教授)終了しました
- 第24回 朝吹真理子(作家)終了しました
- 第25回 隈研吾(建築家)終了しました
- 第26回 三浦雅士(評論家)終了しました
- 第27回 畠山重篤(牡蠣養殖家/NPO法人森は海の恋人理事長)終了しました
- 第28回 小林エリカ(作家・マンガ家)終了しました
- 第29回 森まゆみ(作家・編集者)終了しました
- 第30回 湯山玲子(著述家、ディレクター)終了しました
- 第31回 大竹昭子(作家)終了しました
- 第32回 高橋悠治(作曲家、ピアニスト)終了しました
イベントレポート
東日本大震災を機に、隈研吾、妹島和世、内藤廣、山本理顕各氏と共に「帰心の会」を立ち上げられた伊東豊雄さん。被災地での活動を通してあらためて考えた建築・建築家の役割について、3年前にヒルサイドライブラリーのために選んでくださった本を参照しながら、お話しくださいました。
仮設住宅に集会所「みんなの家」をつくろうと提案されている伊東さん。それは、被災地にささやかな“メディアテーク”をつくることだと言います。人が集まる場に形を与えるのが建築家であるならば、そここそが建築の発生の場となりうるのではないか。伊東さんは、多木浩二著『生きられた家』を紹介しながら、“住む人としての自分”と“建築をつくる自分”という二人の自分の間で対話を続けることこそが、新しい建築の可能性を開くのだ、と語りました。
建築をゼロから考えること―。それは、伊東さんが常に自らに課していることでもあります。磯崎新『建築の解体―1968年の建築情況』は、主題が不在となり、建築が内向し抽象化する時代に、批評性を武器に新しい建築のあり方を模索した“つくらない建築家”たちを考察した名著。60~70年代の建築情況を参照しながら、伊東さんは、批評性のないまま抽象化に進む現代の建築の傾向に疑問を呈しました。
近代主義の失敗ともいえる今回の震災。近代主義とは異なる思考による新しい建築、まちづくりを構想するヒントとして、伊東さんが紹介したのは、中沢新一(文化人類学者)、武満徹(作曲家)、土屋恵一郎(能研究者)、セシル・バルモンド(構造エンジニア)といった人たちの本でした。武満徹著『音、沈黙と測りあえるほどに』から引用された「私は共同の作業を愛する。個を殺すことで何かが浮かび上がる」という言葉は、「帰心の会」において伊東さんが掲げる、「批判をしない」「〈私〉を超えたところで何ができるか」というスタンスと響きあうものではないでしょうか。
この春からスタートした「伊東塾」の活動も含め、建築を志す人々を鼓舞し続けてこられた伊東さん。その「ゼロからの志」は、セミナー会場を埋めた若い聴衆をも静かに揺さぶりました。