目利きが語る“私の10冊”
第18回平良敬一(建築ジャーナリスト)
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出演 | 平良敬一(建築ジャーナリスト) |
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会場 | ヒルサイドライブラリー(ヒルサイドテラスF棟) |
日時 | 2012年2月15日(水) 19:00-20:30 |
定員 | 50名(要予約) |
会費 | 一般2,000円 クラブヒルサイド会員/学生1,000円 |
主催・問合せ | クラブヒルサイド事務局 TEL: 03-5489-1267 (11:00-21:00 月曜休) FAX: 03-5489-1269 E-MAIL : info@clubhillside.jp |
出演
平良敬一(たいら・けいいち)
1926年沖縄県生まれ。建築ジャーナリスト。東京大学第一工学部建築科卒業後、新日本建築家集団(NAU)事務局に参加。1950年「国際建築」編集部員となり、1953年「新建築」へ移籍。退社後、1959年「建築知識」の創刊に携わる。1960年、編集長として「建築」創刊。1962年に鹿島出版に入社、1965年に編集長として「SD」創刊、1968年「都市住宅」の創刊に関わる。1974年に編集事務所・建築思潮研究所を設立し、1975年「住宅建築」、1996年「造景」を創刊、それぞれ初代編集長をつとめた。1997年、戦後日本の建築ジャーナリズムを牽引した功績から、日本建築学会賞受賞。著書に、『「場所」の復権』(建築資料研究社)、『平良敬一建築論集 機能主義を超えるもの』(風土社)、訳書にバーナード・ルドフスキー『人間のための街路』(鹿島出版会)など。
関連シリーズ
目利きが語る“私の10冊”
2008年4月にヒルサイドライブラリーが創設されて4度目の春。その最大の魅力は、各界の「目利き」100人にお選びいただいたヒルサイドライブラリー・コレクションです。 本セミナーでは、毎回「目利き」にご登場いただき、ご自身が選ばれた10冊について語っていただきます。 本は人を通して伝わり、本を介して新たな人と人との交流が生まれます。
※今後の開催予定は決定次第WEBにてお知らせいたします。
- 第1回 池内紀(ドイツ文学者/エッセイスト)終了しました
- 第2回 佐藤忠男(映画評論家)終了しました
- 第3回 青木保(文化人類学者/文化庁長官)終了しました
- 第4回 加藤典洋(文芸評論家)終了しました
- 第5回 中村桂子(生命誌研究者/JT生命誌研究館館長)終了しました
- 第6回 槇文彦(建築家)終了しました
- 第7回 加藤種男(アサヒビール芸術文化財団事務局長)終了しました
- 第8回 野田正彰(精神病理学者)終了しました
- 第9回 福原義春(資生堂名誉会長)終了しました
- 第10回 山本寛斎(デザイナー/プロデューサー)終了しました
- 第11回 菊地成孔(音楽家/文筆家/音楽講師)スペシャル「本と音楽」(1) 菊地成孔が語る「10の本と10の音楽」終了しました
- 第12回 山下洋輔(ジャズピアニスト/作曲家)スペシャル「本と音楽」(2) 山下洋輔が語り、奏でる「本と音楽」終了しました
- 第13回 竹下景子(女優)終了しました
- 第14回 日比野克彦(アーティスト)終了しました
- 第15回 池内了(宇宙物理学者)終了しました
- 第16回 伊東豊雄(建築家)終了しました
- 第17回 東浩紀(作家/批評家)終了しました
- 第18回 平良敬一(建築ジャーナリスト)終了しました
- 第19回 大宮エリー(映画監督・脚本家・作家・演出家・CMプランナー)終了しました
- 第20回 津島佑子(作家)終了しました
- 第21回 原広司(建築家)終了しました
- 第22回 平田オリザ(劇作家/演出家)終了しました
- 第23回 池上高志(複雑系科学/東大教授)終了しました
- 第24回 朝吹真理子(作家)終了しました
- 第25回 隈研吾(建築家)終了しました
- 第26回 三浦雅士(評論家)終了しました
- 第27回 畠山重篤(牡蠣養殖家/NPO法人森は海の恋人理事長)終了しました
- 第28回 小林エリカ(作家・マンガ家)終了しました
- 第29回 森まゆみ(作家・編集者)終了しました
- 第30回 湯山玲子(著述家、ディレクター)終了しました
- 第31回 大竹昭子(作家)終了しました
- 第32回 高橋悠治(作曲家、ピアニスト)終了しました
イベントレポート
2月15日のゲストは、60年以上にもわたって日本建築界を牽引されてきた平良敬一さんです。建築物、建築家の紹介のみならず、歴史や社会を通して、現代の建築を語りつづけてこられた平良さん。
「残りの人生、建築雑誌の編集者ともまた違った、もっと役に立つ実践をしていきたい。ここにある本は、そういった意味で、これからに非常に関係がある10冊。そしてそれは20歳の頃にもさかのぼって――」沖縄に生まれ、教師であった父の影響から東京に暮らすことになった幼少期、時代が戦争に突入し、工場労働者として過ごした少年時代、戦後、日本共産党東大細胞に入党した大学時代――数々の体験とともに平良さんの個人史が淡々と語られます。
そういった時代の中で、圧倒的なマルクス主義の影響を受けてきたといわれる平良さんが、「今読んでもとても力強い。道徳論という一番肝心なところも書かれている。」と真っ先に紹介してくださった著者として、フランスのマルクス主義社会学者アンリ・ルフェーブルの名が挙がります。共産党からの除名、シュルレアリストとの交流など、マルクス主義者という枠を越えたルフェーブルその人の魅力に触れながら、社会科学の分野のみならず、建築、デザイン、都市計画を専攻する人に読んでもらいたいという名著『空間の生産』、さらにはルフェーブルの理論を継承する世界中の近著へと話がおよんでいきます。
大文字の建築、美術がとりこぼしてしまいがちな、だけれども面白いものを取り上げた本として、B・ルドフスキー『驚異の工匠たち』、山田慶兒『制作する行為としての技術』が挙がります。長崎浩さん、清水博さん、中沢新一さんの著作の紹介では、科学技術が必須となる現代において、だからこそ、自然、生命、さらには宗教という言葉が指し示す領域の重要性と可能性について語られました。
10冊の紹介ののち、最後に言いたいと平良さんがおっしゃられたこと。
「ハイデッガーも一番最後に芸術に救いを求めているんですよ。今、そういうようなことは言われなくなってきていますが、ハイデッガーはいいことを言ったと思っているんです。芸術といわれる分野において、これからもっと技術と表現というものが一体化してくるならば、そのとき芸術は世の中をも変えていけるような大きな力を持つのではないかと、そう期待しています。」