目利きが語る“私の10冊”
第22回平田オリザ(劇作家/演出家)
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出演 | 平田オリザ(劇作家/演出家) |
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会場 | ヒルサイドカフェ(ヒルサイドテラスF棟) |
日時 | 2012年11月12日(月)19:00-20:30 |
定員 | 50名(要予約) |
会費 | 一般2,000円 クラブヒルサイド会員/学生1,000円 |
主催・問合せ | クラブヒルサイド事務局 TEL: 03-5489-1267 (11:00-21:00 月曜休) FAX: 03-5489-1269 E-MAIL : info@clubhillside.jp |
出演
平田オリザ(ひらた・おりざ)
1962年東京都生まれ。劇作家・演出家、大阪大学COデザインセンター特任教授。国際基督教大学在学中に劇団「青年団」を結成。こまばアゴラ劇場を拠点に、新しい演出様式による「現代口語演劇理論」を確立する。東京藝術大学COI研究推進機構特任教授、四国学院大学学長特別補佐などを兼任。戯曲の代表作に『東京ノート』(岸田國士戯曲賞、晩聲社)、『月の岬』(松田正隆作、平田オリザ演出、読売演劇大賞最優秀作品賞・優秀演出家賞)、『上野動物園再々襲撃』(読売演劇大賞優秀作品賞受賞)、日韓国民交流記念事業『その河をこえて、五月』(朝日舞台芸術賞グランプリ)、アンドロイド演劇「さようなら」(Prix Ars Electronica2011)など。フランス国文化省より芸術文化勲章シュヴァリエ受勲。著書に『芸術立国論』(AICT演劇評論賞、モンブラン国際文化賞、集英社新書)、『幕が上がる』『対話のレッスン』(講談社文庫)、『わかりあえないことから』『下り坂をそろそろと下る』(ともに講談社現代新書)ほか多数。
関連シリーズ
目利きが語る“私の10冊”
2008年4月にヒルサイドライブラリーが創設されて4度目の春。その最大の魅力は、各界の「目利き」100人にお選びいただいたヒルサイドライブラリー・コレクションです。 本セミナーでは、毎回「目利き」にご登場いただき、ご自身が選ばれた10冊について語っていただきます。 本は人を通して伝わり、本を介して新たな人と人との交流が生まれます。
※今後の開催予定は決定次第WEBにてお知らせいたします。
- 第1回 池内紀(ドイツ文学者/エッセイスト)終了しました
- 第2回 佐藤忠男(映画評論家)終了しました
- 第3回 青木保(文化人類学者/文化庁長官)終了しました
- 第4回 加藤典洋(文芸評論家)終了しました
- 第5回 中村桂子(生命誌研究者/JT生命誌研究館館長)終了しました
- 第6回 槇文彦(建築家)終了しました
- 第7回 加藤種男(アサヒビール芸術文化財団事務局長)終了しました
- 第8回 野田正彰(精神病理学者)終了しました
- 第9回 福原義春(資生堂名誉会長)終了しました
- 第10回 山本寛斎(デザイナー/プロデューサー)終了しました
- 第11回 菊地成孔(音楽家/文筆家/音楽講師)スペシャル「本と音楽」(1) 菊地成孔が語る「10の本と10の音楽」終了しました
- 第12回 山下洋輔(ジャズピアニスト/作曲家)スペシャル「本と音楽」(2) 山下洋輔が語り、奏でる「本と音楽」終了しました
- 第13回 竹下景子(女優)終了しました
- 第14回 日比野克彦(アーティスト)終了しました
- 第15回 池内了(宇宙物理学者)終了しました
- 第16回 伊東豊雄(建築家)終了しました
- 第17回 東浩紀(作家/批評家)終了しました
- 第18回 平良敬一(建築ジャーナリスト)終了しました
- 第19回 大宮エリー(映画監督・脚本家・作家・演出家・CMプランナー)終了しました
- 第20回 津島佑子(作家)終了しました
- 第21回 原広司(建築家)終了しました
- 第22回 平田オリザ(劇作家/演出家)終了しました
- 第23回 池上高志(複雑系科学/東大教授)終了しました
- 第24回 朝吹真理子(作家)終了しました
- 第25回 隈研吾(建築家)終了しました
- 第26回 三浦雅士(評論家)終了しました
- 第27回 畠山重篤(牡蠣養殖家/NPO法人森は海の恋人理事長)終了しました
- 第28回 小林エリカ(作家・マンガ家)終了しました
- 第29回 森まゆみ(作家・編集者)終了しました
- 第30回 湯山玲子(著述家、ディレクター)終了しました
- 第31回 大竹昭子(作家)終了しました
- 第32回 高橋悠治(作曲家、ピアニスト)終了しました
イベントレポート
今回のゲストはご自身についてのドキュメンタリー映画の公開や、ロボット演劇の上演、初の小説を上梓されるなど、ますます活躍の場を広げる平田オリザさんです。
幼い頃から本に囲まれて育った平田さんが自身の人生と、そこに深く関わってきた本について語ってくださいました。
幼稚園の園長先生からもらったケストナー『動物会議』から始まる平田さんの読書体験は、まず16歳から17歳にかけての自転車世界一周旅行に最初のピークを迎えます。それは人生観が決まるほどの経験であり、集中的に本と向き合えた時間でもありました。父親から旅先に送られて来る本は、その土地に関するものが多く、トーマス・マン『ブッデンブローク家の人々』もドイツで読んだといいます。坂口安吾にもその旅で出合い「青春とは暗いものである」という言葉に自らの青春を重ね『暗い青春 魔の退屈』は当時の平田さんのバイブルとなりました。
2度目の集中的読書体験は、大学時代の韓国留学。外国語に囲まれる中で、数々の長編小説を読み、その体験が代表的スタイルである“現代口語演劇”を確立するキッカケとなったと言います。
大好きな小説である夏目漱石『三四郎』は「明るいけど影がある。未完成の魅力に溢れている」といいます。日露戦争から3年後に書かれたそれは背景に国家の不安が描かれていて奥深く、作中の「亡びるね」という言葉どおり、約30年後日本は泥沼の戦争に突入します。バブル時代、劇作家としてはその恩恵を受けることのなかった平田さんの心の中には常に「亡びるね」とういう言葉があったといいます。バブル崩壊から約30年が経ち、混迷の時代を迎えている日本。今こそ、多くの若者にこの本を読んで欲しいといいます。「強いリーダーシップよりも、迷ったり、悩んだりする方が大事。そうして平衡を保っていく事が社会の健全なあり方」という平田さんの言葉が印象に残りました。
その他にも、ロボット演劇として上演したばかりのチェーホフ『三人姉妹』などの戯曲や、後に演劇で上演した小説などを紹介してくださいました。一冊の本から社会背景を読み取り、時にそれを演劇に繋げていく平田さん。改めて本の力を強く感じることのできるセミナーでした。